『妻と飛んだ特攻兵』敗れてもなお、守るべきものがある。~大空に散った若き夫婦が遺したこの国へのメッセージ 今夜テレビ朝日で放映。作者が明かす秘話

現代ビジネス 8月16日(日)6時2分配信

彼らは、何も語らずに逝った

 8月16日、戦後70年ドラマスペシャル「妻と飛んだ特攻兵」(テレビ朝日・東映制作)が放映されることは原作者として望外の喜びである。このドラマは夫婦特攻の実話をベースにしたフィクションであるが、堀北真希と成宮寛貴の迫真の演技により、戦争の罪深さが見事に描かれている。特攻で散った若い夫婦の壮絶な生涯が広く知れ渡り、「戦争は二度と繰り返してはならない」という痛切なメッセージが多くの視聴者に届くことを期待している。

 また、二度とあってはならぬ悲劇の中においても、徹夫と朝子、神州不滅特攻隊の隊員たちの行動の中にある「凛とした精神性」を視聴者に感じ取ってほしい。これは日本人が決して忘れてはならないものだと私は考えている。

 しかしやはり、二人を直接に知る遺族や戦友にこのドラマを観て欲しかった。2年前に亡くなった谷藤徹夫の戦友は、私にこう語った。

 「谷藤たちは何も語らずに逝った。彼らの存在を知ってもらうことが、彼らに捧げる鎮魂であり、いかに戦争が悲惨で愚かで虚しいかを訴える警鐘となると思います」

 徹夫と朝子、神州不滅特攻隊についての新事実はこれからも発掘されていくだろう。年月が経てば経つほど困難になっていくが、私はその可能性を捨てたくはない。(※豊田氏は今年7月、『原爆と戦った特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊(レ)の救援作品』も上梓した)。戦後70年間埋もれてきた真実を追い求めることこそが、戦争のない平和な世界を祈念する行為そのものであると信じているからだ。

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豊田正義(とよだ・まさよし)1966年、東京生まれ。ノンフィクション作家。著書に『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』『独りぼっち 飯島愛 36年の軌跡』など。14年に刊行した『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』が厚生労働省社会保障審議会の推薦により「児童福祉文化財」に指定される

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豊田正義

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