幕府のご意見番 大目付深谷遠江守の上申書の訳文(1853年8月)

 

御国の法(鎖国令)があります以上は、国中あげて外になすことなく、

どのような事にでも身命を投げ打って忠節を尽くさねばならないと申し上げる

ものであります。

しかしながら一方的に手荒なご処置をなされては穏やかでないと思われますので

可能な限り穏便に致される方策を ご採用になり、諭された方が宜しかろうと

思います。彼(ペリー)の書面には色々と勝手な言い分が多く、更に漂流人の

取り扱いに関する申し立てなども 彼の書中に種々認められますが、「(外国船を)

見掛け次第打ち払え」との ご趣旨に付きまして、今更申し立てるのも不都合では

ありましょうが、浦賀表 その外、まだ警護が手薄でありますので、この冬 或いは

春にご返信をなす旨 ご様子をさぐられ、もしも本当に渡来いたしましたならば

右の事情もあり、穏便に交渉されたならば、聞き入れるのではないかと思われます。

とりわけ近頃は難問山積のご時勢であり、彼に対処せねばならない事態と成って

おりまして、こういう状況下 私のこの願い出の趣意は(以下略)。


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